【LAS人】こんなアスカは大好きだ!10【専用】
372氏
- 372 名前:@ 投稿日:2006/05/28(日) 22:58:06 ID:???
- ある日の夜、テレビの料理番組を見ていたアスカが突然立ち上がった。
「シンジ、プリンが食べたい!」
週刊『主婦の友』の旬のおかず特集を熟読していたシンジはまたか、と思いつつも
中学生にして芽生えてしまった主夫の性か、ついつい作る気になってしまう。
「プリン?材料あったかなぁ」
「固める奴とか駄目よ!」
「もしかして卵と牛乳と砂糖だけで作る奴?」
「そ!今テレビでやってたのよ」
アスカの期待とは裏腹に、シンジは困った表情を浮かべた。
ゼラチンや専用の粉を使って作った事はあるが、使わずに作る方法は知らない。
「でも僕は作り方知らないよ?」
「アタシが教えてあげるから。番組でやってた方法を繰り返すぐらい、この天才アスカ様に任せなさい!」
安請け合いをして困るのは僕だ、とシンジは思った。
ましてや料理をする所など見たこと無いあのアスカの指示を受けながらだ。
成功する可能性を危ぶんだシンジは、迷った末に提案してみた。
「材料は僕が用意するからさ、アスカが作ってみたら?」
「嫌よ!面倒臭いからアンタが作りなさい」
「・・・・」
- 373 名前:A 投稿日:2006/05/28(日) 22:59:06 ID:???
- シンジは益々困る。と、以前加持に言われた事を思い出す。
『シンジ君、女性に頼みごとをする時は無理に説得するんじゃなく、相手をその気にさせることだ』
しかし父の才能をモノの見事に受け継がなかったシンジはどうすればアスカをその気にさせられるか思い浮かばなかった。
「・・・うまくできたら明日の夕飯はハンバーグにするけど?」
それを聞いたアスカの表情が一瞬にして曇る。眉が歪み、今にも怒鳴りそうになった。
失敗した!、そう思ったシンジは罵声に備えて手を顔の前にかざす。しかし予想した衝撃はこなかった。
恐る恐るアスカを見ると、プライドと食欲の葛藤が生じているようで、ハンバーグを釣り餌にされて傷つけられたプライドと
シンジの作る絶品ハンバーグを一週間に二度も食せる幸福との優先権争いが起きていた。
「・・・しょうがないわね。アタシが作ってあげるわ!」
腰に手を当てて、食欲が勝った事を暗に宣言したアスカはまだ子供だということなのだろうか、とシンジは思った。
シンジがアスカの言うとおりの食材を整え、お膳立てをしたところでアスカは
「アンタに作り方は教えてあげないから!」
とシンジを追い出してしまった。
少しホッとしたシンジは再び『主婦の友』を手に取り、時たま
『うぉりゃああああ!』とか『でやあああああ』、と気合の入った掛け声が聞こえる台所に視線を向けながら
和風ハンバーグにしようか洋風ハンバーグにしようかと明日の買出す材料に心を走らせていた。
- 374 名前:B 投稿日:2006/05/28(日) 23:00:16 ID:???
- 40分後、出来上がったプリンがテーブルの上に出された。
卵や牛乳が顔のあちらこちらに付着したアスカの顔を見てイケナイ妄想を働かせてしまったシンジは、健全な男の子なのだろう。
台所が破壊されることもなく、爆発が生じることも無かったが、しかしアスカの表情は暗い。
「・・・茶碗蒸し?」
シンジが思わず言ってしまった一言に、アスカの表情が更に曇る。
なるほど、プリンというよりは茶碗蒸しに近い香りが辺りに漂っており、
適当な容器が無かったせいか容器も茶碗蒸しに使うそれだった。
「・・・いいから食べてみなさいよ」、とアスカは有無を言わさぬ口調で呟いた。
一生懸命作った作品を冒涜されるのに耐えられなかったのだろう。
鈍感なシンジだったが、その辺りを汲み取りスプーンを手に取り覚悟を決めて一口食べてみた。
途端に口の中に広がるふわりとしか食感と、とろけるような味覚がシンジの舌を刺激した。
美味しい、素直にシンジはそう思った。輝かんばかりの笑顔でアスカにそう伝える。
「美味しいよ、アスカ!」
するとアスカは途端に笑顔になり、
「とーぜん!この天才アスカ様の作ったプリンなんですからね!」、と得意そうな表情になる。
シンジがパクパクとプリンを口に運ぶのを見てご機嫌はさらに良くなる。
両手で頬付き、美味しそうにプリンを食べるシンジを嬉しそうに眺めるアスカだった。
- 375 名前:C 投稿日:2006/05/28(日) 23:01:16 ID:???
- 「・・・でもちょっと甘さが足りないかな?」、としばらくしてシンジが言った。
なるほど、シロップはうまく作れ無かったようで、プリンにはあの茶色のシロップがかかっていない。
ケチをつけられた形のアスカだったが、確かにそれは彼女も感じていた事だった。
するとアスカはシンジの手に持っていたスプーンを手に取り、「どれどれ」、とプリンを口に頬張る。
すると突然アスカはシンジに顔を向け、顔をサッと近づけシンジの唇を奪う。
シンジは口の中に流れ込んでくる甘い味に半ば我を忘れた。
「・・・こうすれば甘いでしょ」、と顔を真っ赤にしたアスカが言った。
そしてドタドタと自分の部屋に駆け込んでいった。
残されたシンジはしばらく呆然としていたが、今しがた起きた事の意味に気付きアスカと同じように顔を真っ赤にした。
するとアスカの部屋の襖が開き、
「明日のハンバーグ、忘れないでよ!」、と言い残し
アスカは舌を軽く出して真っ赤な顔を部屋の奥へと引っ込めるのであった。