【LAS人】こんなアスカは大好きだ!14【専用】
392 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/04(木) 00:41:04 ID:???
寒過ぎず暑過ぎず。
そんななんとも程好い気温と湿度の中、今日も夜はやってきた。

今宵の葛城家。
テレビに映し出される映像に三人は集中する。
そこに映し出されるものから察するに「ホラー」という夏には欠かせないジャンルの映画。
昔の日本で流行ったもので、おもしろいから見てみろよ、とケンスケ経由でシンジの手元に渡り、それを鑑賞中。

物語も詰めに入り、固唾を呑む三人。
この世の者とは思えぬ眼で男性を睨み付けるシーンは体が強張ってしまう。
そしてエンディング。

「いやいや、相田経由だと聞いてたから期待せずに見てみたものの、これはなかなか」

紅い髪飾りのようなものを付けた少女が腕を伸ばしながら感想を述べる。

「うん、おもしろかったね」

DVDプレイヤーからディスクを取り出しながらそれに相槌を打つ少年。

「にしても、ラストが続編ありきって感じだったけど、あるのかな?」

「どうだろ? 明日、ケンスケに聞いてみるよ」

「ま、続編になればなるほど駄作になるのも多いし、ここで終わらせるのが得策じゃなーい?」

ビールを煽りながらどこか冷めた口調で喋るのは女性。

「それも言えてるわねぇ……」

393 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/04(木) 00:42:29 ID:???
「それにしても見事に誰も怖がりませんね」

自分以外の二人を見渡し、何となしに苦笑を浮かべる少年。

「見てる最中は怖いって気持ちもあったけど、それはそれ。結局は作品の中って割り切っちゃえばどうってことないわね」

口調は強気。態度も強気。
何時も通りのその姿を見るに、どうやら本当に怖がってはいないようだ。

「あれれ? もしかしてシンジ君は、ビクビクと今も怯えてたりするのかなぁー?」

チャシュ猫のような嫌らしい笑顔を浮かべ、少年を小馬鹿にした口調。
だが、これも少女なりのスキンシップと理解している少年は不貞腐れたりもせず優しく述べる。

「んー、どうだろうね? 怖いっていう感想よりも、おもしろかったって感想が強いから大丈夫だと思うよ」

「けどさぁ、何て言うの? ホラーってジャンルはとりあえず驚かせれば良い、と思ってる風潮が気に入らないわよねぇ」

刺々しい台詞でふたりの会話に入る女性。
この作品がおもしろいと感じなかったのか、それともホラージャンルの映画を見飽きているのか、なんにしてもとても冷めた感想である。

「でもそれが、ホラーっていうジャンルらしさとも言えますよ?」

「こう、新しい手法で怖いと思わせてくれる映像を見せろってのよ、まったく」

何時もより酔いが早いのだろうか、なんとも女性らしくない言葉だ。

「まぁ、一昔前の作品ですし今更そういうのも―――」

少年が女性に対して言葉を投げ掛けている最中にそれは起こった。

394 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/04(木) 00:43:41 ID:???
パチン!と電気が消える音。
そして訪れる漆黒の闇。

「うきゃうぁ!」

その刹那、響き渡る甲高い声。
そして少年の背中にドサッと何かが圧し掛かる。
その衝撃に心臓が口から飛び出そうに驚いた少年だが、ぐっと堪え声を出さないことに成功し、何かを圧し掛からせたままスイッチのある場所まで体を引き摺る。

パチン!

今度は点灯される音。
そして訪れる眩いほどの光。

「もーお、何やってるんだよ!」

背中に圧し掛かる重みに抗議の声。
そしてその重みは少年の反応が気に入ったのか「ふふっ」と微笑む。

「やっぱり怖がってるじゃん! 体が一瞬硬直したのが解ったわよぉー?」

暗闇で何も見えないというのに、先ほど見た作品内に登場した怨霊の女性のように髪飾りを外して綺麗な髪を下ろしていた。

「あのね、あんなことされたら誰だって驚くし、怖がるよ」

普段見せない髪を下ろした姿にドキドキと胸を躍らせながらも少年は反論する。

「アンタもこのアタシの眼力で心臓発作にしてやるぅ〜」

ぎゅっと首に手を回し、後ろから抱き着く形で何とも甘えた調子の威圧感を醸し出す少女。

395 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/04(木) 00:44:58 ID:???
彼女の誇りとも言える紅い髪飾りを外し、人前では絶対に見せない髪を下ろした姿は、彼女の信頼の証であり親愛の証。
言葉に出来ない分、こうやって行動に出しているのが何とも可愛らしい。
……まぁ、本当にからかいたかったという気持ちもあるだろうけど。

ビール片手にそんなことを思いながらふたりの様子を優しく、どこまでも優しく見つめている女性。
そして心から楽しそうにじゃれ合っている少年と少女。

そんな夜。



「さぁーて、そろそろ寝ましょうか」

「そうだね」

「シンちゃーん、怖いなら一緒に寝て上げましょうかぁー?」

「アスカこそ、怖かったら手を握りながら寝て上げても良いよ?」

そんな遣り取りをしてクスクスと笑うふたり。

「あらぁー、言うじゃない。『うきゃうぁ!』とか叫んだくせにぃー!」

「へ? あれってアスカが雰囲気出すためにわざと叫んだんじゃないの?」

「ほえ?」

沈黙。
ふたりは素の顔で見合わせる。
恐る恐る振り返ろうとするふたり。

396 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/04(木) 00:46:13 ID:???
が、そうする前にふたりの手が何者かに握られる。

「……ふたりとも……今の台詞、しかと聞いたわよ……」




で、何故かリビングで『川』の字になって寝ている三人。
少し可笑しなところがあるとすれば『川』の文字に隙間が無いことと、真ん中の線は左右の線にずっと手を繋がれていたこと。

そんな葛城家。