【LAS人】こんなアスカは大好きだ!14【専用】
そんな葛城家 カレー
415 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/05(金) 00:54:51 ID:???
アホー、とカラスの鳴き声が良く似合う夕方時。
「キッチン」という場は本来少年のテリトリーなのだが、本日は少女と女性が侵食。

「じゃあミサトは人参の皮むきお願いね」

「お任せあーれ」

いつも、何時も、いっつもお世話になっている少年に対して、感謝の気持ちを込めてふたりでカレーなんて作ってみようと思った次第。
ふたりは料理経験が片手で足りるほどの経験でしかない。
しかし、この時代何かと後押ししてくれる物が多々存在する。
特に役に立つのはパーソナルコンピューター、略してパソコン、更に略してPC。
インターネットという膨大な量の情報源を駆使すれば、何とか作り方は理解できる。

「ネットに書いてた通りあんまり実を削らないでね?」

「解ってるわよん」

しかし幾ら時代が最先端となり、地中にビルが埋まったり、武装された建物が変わりに生えようと変わらないものは存在する。
存在させるべきなのだ。
この『野菜の皮むき』という行為もその一種。

家族の大黒柱が父親なら家族の神様は母親。
そんな母親が毎日、愛する家族の為に披露する料理は、いかにデリバリーなどの存在があろうとも、いかに便利な道具が発明されようと
変わっては欲しくない。

そんな母親代わりの少年を想いながら、精一杯の気持ちを込めて作る料理。
メニューはカレー。

自分達を過信しすぎてはいけない。
無難に出来ることをやれば良いのだ。

416 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/05(金) 00:56:33 ID:???
「ほい、ほい、ほい、ほい」

「それ、それ、それ、それ」

容姿が似てなければ、年齢も離れすぎている。
しかし、そこにあるのは姉妹より姉妹らしい少女と女性が、お互いに口ずさむメロディーで料理を作る図。

「でさあ、そろそろしないの?」

不意に女性から問われる主語のない質問。
しかし少女には抜け落ちた主語が何なのか解り切っていたこと。

「……もう少し、ね。このままなのも良いかなぁって」

恋愛ごとに疎いためだろうか、怯えがどこかになるのかもしれないと考え、女性はきっぱりと自分の思いを言う。

「シンちゃんだってぜーったいアスカと気持ちは一緒よ」

だといいんだけどね、と少し恥ずかしそうに、そしてどこか寂しそうに微笑む少女。
そんな少女に対して、女性は優しく頭を撫でてあげる。

「……あたし、ミサトとシンジと一緒に『家族』ができてすっごく幸せ」

「……私もよ」

少し寄り添うように甘え合うふたり。
ふたりの目にはキラリと光る涙。

417 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/05(金) 00:58:01 ID:???
「……ミサト」

「……アスカ」

見つめ合うふたり。
ふたりは止め処なく降り注ぐ涙を止めることができない。

「……ぐすっ、ぐすっ」

「……うっ、うっ」

「「タマネギが目に滲みるぅーー!!!!」」

目を抑えながらごろごろと転がり続けるふたりを前にペンギン一匹、頭を捻りましたとさ。
そんな夕方時。



で、夜。
出来上がったカレーを少年にプレゼント。
大層感激した少年はふたりをそれぞれ抱き締めて感謝の言葉。
女性は少し照れくさそうに、少女は顔を真っ赤にさせていた。
しかし、少年にとって少し困ったことがある。
それは――

「あ、それ皮むいたの私! シンちゃんおいしい?」

「辛くなかった? いける? おいしい?」

「あー……ジャガイモ、ちょっと形くずれてる……、シンちゃん、マズくない?」

418 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/05(金) 00:59:07 ID:???
「ちょっと煮込みが足りなかったかしら……硬くない?」

と、自分達が食べることも忘れて自分に美味しいかどうか聞かれ、食べ終わるまでずっと見られながら食事するのは恥ずかしかったそうな。
で、少年にしては珍しく悔しいという感情が出てきたそうな。

(んーーー! ふたり分の感謝の気持ちが篭ったカレーだからかな……、何時も作る自分のよりもおいしい……ちょーっと悔しい……かな?)

なんて思いながら素晴らしい笑顔。
いつかこの気持ちの上をいくカレーを作りたいなぁ、と強く心に決めながら。

「あ、ご飯はペンペンが炊いてくれたのよ!」

「クェー!」

「ええっ!?」

二人分+ペンギン一匹分の気持ち……。
とほほ、絶対に勝てないや……。

そんな葛城家。


>>414
たまらんのぉ、たまらんのぉ。
心の中の可愛さが何とも言えん。
癒されるならやっぱり人様の作品だなぁ、乙。