【LAS人】こんなアスカは大好きだ!14【専用】
そんな葛城家 風邪
441 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:50:36 ID:???
ちゅんちゅん、とスズメの鳴き声が木霊する朝。
何とも言えないひんやりとした空気と照り付ける太陽がそれを演出する。

「ごほっ、ごほっ」

そんな朝に響いてくるのは、少女の咳だった。

「37.5度……風邪かな、やっぱり」

『病は気から』とは良く言ったもので。
気持ちの持ち方次第で病気になることもあればないらないこともある。
となれば、気の緩みで病に伏せるのは当然の道理だ。

「最近は気温の変化が激しいから、気をつけなきゃ」

「ごほっ……反省します」

あの時、暑いと思い布団を蹴り落とした自分が憎い。
せめてもの救いは、まだ咳と軽い熱がある程度で済んでいること。
これに喉や鼻までやられていれば地獄である。

「悪化する前に治さないとね、学校には連絡しとくよ」

「……ん、お願い……」

ふぅ、と息を吐き布団に包まる。
取り敢えず、女性と少年が出掛けてからの予定を考える。
昼食は……、バカシンジのことだし用意してくれるかな?
……うっわー、あたし甘え過ぎ。弱くなっちゃったなぁ……。
それもこれもアイツとミサトのせいよねぇ、やっぱり。

442 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:52:12 ID:???
割合で言えば7:3(シンジ:ミサト)?
いやいや、惚れた弱みがあるにせよ、6:4が妥当ね。

なんて考えてしまうが、昔の自分なら『弱くなった』という考えが少しでも生まれれば全力で否定しただろうなぁ、と少し感傷に耽る。

ホント、弱くなっちゃったなぁ・・・・・・。

でも、それがとても清々しい気持ちにさせてくれる。
今もこんなこと考えながら少し微笑んでいるのだから。

「・・・・・・病気になると気分はセンチメンタル、ね・・・・・・」

「言うわねぇ、アスカ」

おかゆが入ったお皿をお盆に乗せて持ちながら、語り掛ける女性。
何とも言えない暖かい匂いがお腹を刺激した。

「はい、シンちゃん特性のおかゆ」

「ありがと、お腹減ってたのよねぇ」

「ん、食欲があるなら安心、安心」

へへっ、と少し恥ずかしそうに笑いながら手を伸ばしお皿を受け取ろうとする少女。
しかし女性は、のんのんのん!と言葉を発しながら右手の人差し指をゆっくり振る。

「はい、あ〜ん」

「・・・・・・あのねぇ・・・・・・」

443 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:53:36 ID:???
「ま、ま、ま!あーん!」

はふぅ、と今度は溜め息を付いて諦めモードに差し出されるスプーンを咥える。

「ん、おいし」

「それはなにより」

ちょっと恥ずかしいが、こんなのもたまには良いわね、なんて考えて差し出されるスプーンを何度も咥える。

「あ、ミサトさん。風邪薬ってどこにありましたっけ?」

「えーっと確か・・・・・・ちょーっち探してくるからシンちゃん、バトンタッチ」

「はい」

そういわれて渡されたスプーンを受け取る少年。

むぅ!羞恥心2割アップね・・・・・・。

これからスプーンを差し出すのが少年に変更されたことにより、冷静に分析する少女。
それによる答えは羞恥心2割アップの拒否心3割ダウン。
女性には申し訳ない気持ちがあるが、少年が相手なのだからご了承頂きたいものだ。

「・・・・・・って、アンタ達そろそろ出る時間でしょ? ほらほら、早く準備する!」

時計を見ればそろそろ2人が出なければならない時間である。
幸い自分の症状は軽いものだし、一人でもなんとか出来そうだ。
少し寂しい気持ちもあるが、ペンペンも一緒だから不安ではない。

444 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:54:58 ID:???
しかし、そんな少女の気持ちを知ってか知らずかふたりの答えは既に決まっていた。

「学校は休むよ」

「仕事はお休み」

「・・・・・・はぁー?」

何とも呆れる返答である。
自分でも大丈夫だと言っている、強がりでも何でも無い。
寂しいなら恥ずかしくて堪らないが、今のあたしならそこそこ素直にちゃんとそれを伝えて、一緒にいてくれと懇願するだろう。
気持ちは嬉しいが本当にそこまで心配する必要もないし、ここで残られる方が逆に迷惑を掛けることになる。

「ホント、大丈夫だから。そこまでしなくても良いわよ」

「駄目駄目!可愛い妹が病に苦しんでいるのに放ってなんかおけるもんですか!」

「うんうん」

「その気持ちは泣きそうなぐらい嬉しいけど、ダーメ。ほら、準備する!」

そう少女がほんの少し怒気をこめ言い放った瞬間、少年と女性は両手を絡め合い、なんとも表現しにくい寂しそうな表情で向き合いながら芝居を始める。

「シンちゃん・・・・・・」

「ミサトさん・・・・・・」

「私達・・・・・・」

「家族と思われてないんですね・・・・・・」

445 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:56:17 ID:???
よよよ、と大袈裟に倒れこみながら泣き真似。
・・・・・・シンジ、アンタ男なのになにやってんのよ・・・・・・。

「僕達は・・・・・・僕達は・・・・・・」

「ただ・・・ただただ・・・アスカが心配なのに・・・・・・」

そしてまた、よよよ、と泣き真似。
・・・・・・シンジ、良くあたしとミサトを姉妹みたいって言うけど、アンタとミサトも十分姉弟みたいよ・・・・・・。

むぅぅぅぅ・・・・・・っっはぁー・・・・・・と壮大な溜め息をついて少女は観念して、一言洩らす。

「看病、して下さい」

その台詞を待ってましたと言わんばかりの眩い笑顔で少年と女性は元気良く答えた。


「「もちろん! 家族だもん!」」


そんな朝。



で、次の日。

「惣流・アスカ・ラングレー、復ッ活ッ!!」

天に向かって握り拳を翳して、高らかに宣言。
そしてくるりと後ろを振り返る。

446 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2007/10/06(土) 23:57:40 ID:???
「うーん、うーん!」

「げほっ! げほっ!」

少年と女性が真っ赤な顔をしながらリビングに布団を敷いてダウン状態。
っもぉーーー!と生涯の中で最大の溜め息をついて少女は呆れ返る。

「アンタ達、ベタ過ぎて笑えないわよ!」

ミイラ取りがミイラになる。
これほど言葉通りの出来事が起こるのも珍しいものだ。

「アスカちゃーん・・・・・・」

「アスカぁ・・・・・・」


「「看病してぇ〜・・・・・・!!」」

「言われなくてもそうするわよ、ダブルバカ!!」



そんな葛城家。