【LAS人】こんなアスカは大好きだ!15【専用】
バレンタイン
765 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/02/14(木) 05:44:31 ID:???
 バレンタインデーにチョコなんて業者の考えた下らない行事だ

そう彼女は言っていた。その発言を肯定するように、浮かれる周囲とは正反対にチョコを準備もしなかった。
「私の想いはただのチョコレートで表現できるほど単純じゃないもの!」
そう言って彼女は毅然としていた、あの噂…『手作りのチョコを1番に食べてもらえたら想いが叶う』なんてものを耳にするまでは。

「いや、だからね?チョコは湯煎で溶かすの、フライパンじゃ無理だから」
「…ユ…セン…?何それ?」
「ああ、なるほど、そこからなんだ」

2月13日午後11時頃、葛城家厨房はちょっとした地獄となっていた。
「ああ〜んもうどうすんのよ〜!これじゃ加持さんにプレゼント出来ないじゃない!」
「だから最初からレシピを見てって言ったんだよ…やり直そう、とりあえずチョコは僕が溶かすから…」
「もう全部シンジがやってよ、アタシもーめんどくさーい」
「いや、それ意味あるの?」

刻一刻と時間は過ぎていく、甘い香りにあてられたのか同居人の一匹は冷蔵庫に篭り、もう一匹はそもそも帰ってきていない、今頃書類と戦いながらウイスキーボンボンを摘んでいるだろう。
つまりは二人きり、その状況に彼は気付いているのだろうか、チョコを溶かすその真剣な目からはうかがう事は難しい
…だがまあ、そんな事はともかく調理は続き、幾度の想定外の失敗を乗り越えなんとか味付けの段階にこぎつけた

「じゃあ味付けはアスカがするんだね?…僕はこのままオーソドックスな物にするのが1番だと思うけど」
「ダメよ!1番に食べてもらうんだからインパクトのあるやつにしないと!今日はもうチョコいいやってなるくらいのやつを!」
「それ…良い意味でだよね?何故か出てる一味唐辛子の瓶と関係は無いよね?」

少年の心配は杞憂に終わるはずも無く、少女はチョコの常識を簡単にぶち破った。翻った瓶の本数は7、もちろん赤い蓋の瓶も含まれていた。
「さ、味見してちょうだい?…拒否権は無いわよ」
おおさじいっぱい、恐る恐る口にした少年は膝から崩れ落ちる、ああ、それでも飲み込むとはなんと健気な。12時を跨いだその闘争は少年の脱落と残存食材の消滅によって幕となった。

「どれ、私も一口…うん、やっぱりこれは今日一日中チョコは見たくも無くなるわね…」


769 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/02/14(木) 17:14:22 ID:???
「シンジこのチョコあげる!義理よ義理!」
「あ、ありがとう」
「いい!?義理なんだからね義理!!」
「あはは…わかってるよ」
「義理なのよ!わかってるの!?」
「わかったよ…わかったから…」
「ぎ〜り〜よっ!ぎりチョコよ!」
「あの、そろそろ食べたいんだけど…」
「ぎ〜り〜!!」
「袋開けるよ?」
「ぎ〜り〜!!」

袋の中から「シンジ大好き」と書かれたチョコ

「アスカこれ…」
「そ、それは間違えて書いたの!!ぎ〜り〜な〜のっ!!」
「アスカ…(ぽっ)」
「ぎ〜り〜!!!」
「ありがと…(ぽぽっ)」
「ぎ〜り〜!!!!」


775 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/02/14(木) 23:49:08 ID:???
 綺麗にラッピングされた箱をちらつかせてアスカが問う。

「シンジ、チョコいる?」
「えっ?…い、いや、べ、別にいらないよ…
(聞かれてもらうもんでもないし…」
「あっそ。」

ビリッ…ボリボリ…ムシャムシャ

「…!」

勢いよく食べ始めるアスカ。見る間に吸い込まれていくチョコ。
呆気にとられて見つめるシンジ。甘い香りが広がるリビング。

「…何よ?やっぱ欲しいの?」
「えっ…いやその…」
「もうじれったいわね!」

バリバリ…ボリボリ、もうわずかしか残っていないチョコを
矢継ぎ早にほおばりながら立ち上がるアスカ。

「こういうのってさ、『熱い想いをチョコに託して』なんていうけどさ、
チョコはチョコよ。モグモグ…
所詮、物品の授受でしかないのよ。
ほとばしる熱い想いは行動で示すしかないのよ!
…行くわよ!シンジ!」


アスカ生涯初のディープキスは甘い甘いチョコレート味でしたとさ。