【LAS人】こんなアスカは大好きだ!3【専用】
『昼は家康、夜は秀吉、時々信長』
- 971 名前:『昼は家康、夜は秀吉、時々信長』 投稿日:04/09/11 18:10:44 ID:???
- それぞれの目の前に置かれた小皿。
キッチンテーブルに座ったアスカさんとシンジ君は、おやつ代わりの柿を食べていました。
「『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』かぁ…」
爪楊枝で刺した柿を見ながら、しみじみと呟きました。その言葉に『んっ?』っと反応する隣のアスカ。
「ホウリュウジって…この辺にお寺なんて無いじゃない。鐘なんて聞こえるわけないでしょ」
「アスカ・・・」 「冗談よ。…確か、マサオカシキのハイクよね?」
最近まで国語の授業では近代文学史をやっていましたが、どうやら2人ともよく憶えているようです。
特にアスカさんは日本文化への興味が強いのです。母国にでもするつもりなのでしょうか。
「ハイクっていえば面白いのあったわね、社会科で」
「社会科…日本史の? アスカがやたらと感心していたアレ?」
柿を齧りつつ少し前の事を思い出しながら言いました。
「そう! あの、え〜、ほら……そうそうカナリヤだっけ?」
「…ホトトギスだろ?」 「……冗談よ。…とにかくその、ホトトギスが出てくるハイクよ」
何故か顔を少し赤くしながら、僅かに語気を強めるアスカさん
「アレよ、あの三人の性格を表わしているってハイクね」
「信長、秀吉、家康だよね。性格を表わしている、か…」
シンジ君は以前にも似たような話をしたことを思い出しました。その時、『アスカなら、「殺してしまえ」かなぁ』と思ってしまった事は秘密です。
- 972 名前:『昼は家康、夜は秀吉、時々信長』 投稿日:04/09/11 18:12:23 ID:???
- 「・・・シンジ…アンタなんか今、スッゴク失礼なこと考えなかった?」
「な…何言ってんだよアスカ…はは・・・」
半眼で睨んでくるアスカさん。その鋭すぎる指摘に、笑って誤魔化すシンジ君。
「ま。どうせアンタの事だから、アタシだったらオダノブナガと同じ事考える、とか思ったんでしょ!」
「え、い、いやそんな事は…」
更に鋭い、もはや凶器とかした指摘に貫かれながらも、しどろもどろに否定しようとするシンジ君。
「ふふん。残念ながら不正解よ。アタシはやっぱりアレね! 『鳴かぬなら 鳴かせてみせるわ ホトトギス』!!」
握りこぶしを掲げながらそう言い切った。そのある意味非常にアスカらしい答えにも関わらず、シンジ君は別のことを考えていました。
(アスカ・・・秀吉? サ…い、いや考えちゃ駄目だ…)
彼が内なる葛藤を続けている間に、アスカさんはシンジ君の分の柿も食べてしまいさらに…
「アンタは、『ホトトギス 鳴くまで待って 時間切れ」って感じよね」
何気にひどい事を言っています。
「はっ、えっ? な、なんだよそれ…」
流石に少し気分を悪くします。先ほどの葛藤は跡形も無く吹き飛びました。
「冗談よ。最近のアンタはそんな事ないもんね…」
珍しく直ぐに前言を撤回し、さらにもっと意外な言葉を続けました
「そ、そうかな・・・?」
不意打ちの言葉に今度は照れています。褒められる事に慣れていないようです。
- 973 名前:『昼は家康、夜は秀吉、時々信長』 投稿日:04/09/11 18:17:21 ID:???
- その反応に見ると、アスカは嫣然として彼の耳元へ唇を寄せた。
「そうよ……特に夜は…ね?」
突如耳元に感じた吐息、背中にゾクリと痺れるような震えが走る。
「あ、あすか…」
顔を向けると、彼女のまだ幼い、それでいて凄艶な笑みがあった。
いつからこんな表情をするようになったのだろうか。年齢不相応なその笑みを見て、そんな思いが頭を擡げる。
その原因や責任の大半が自分にあるかも知れない、と言う事は重々承知しているが、しかしそれでも、なんとも言えない溜息が己が内にてそっと漏れた。
普通に話をしているときに、突然前触れもなくこのような表情を浮かべる。何て事が最近多い。それもいつでもどこでも、である。
自分が小心者である事は自覚している。だから天下の往来でそんな顔をされても自分には何も出来ないし、そもそも誰が見ているかわからない。騒がれるのは好ましくない、自分は小心者なのだ。
…ところで、最近気がついたのであるが、自分は嫉妬深くもあるらしい。さらには独占欲も強いようだ。
だから彼女のこんな表情は、家の中だけに仕舞っておきたい。他の誰かに見られるのは、はっきり言って気に食わない。
それがもう一つの理由。どちらが一番の、かは考えないようにしておこう。
理由がどうあれ彼女がその衝動を抑える事は無いだろうから。まあ、惚れたが因果、致し方ない。
いずれにせよ今は家の中、二人きり。そんな理由はどうでもいい。小心者も嫉妬深さもなりを鳴りをひそめる。あるのは少々の独占欲と…
黙ってアスカの身体と頭を抱き寄せる。
「今夜も…鳴かせて…」
籠はこの家、小鳥はアスカ。