【LAS人】こんなアスカは大好きだ!5【専用】
バレンタインネタ こっそりと・・・氏
- 833 名前:こっそりと・・・ 投稿日:05/02/14 05:23:52 ID:???
- 今日が終わろうかという時間帯。
歯磨きを終えたシンジが部屋に戻るためにリビングを通ると
「うううぅぅぅ」
アスカが頭を抱えて唸っていた。
「・・・ばかばかばか」
しかもブツブツ言っていて、少し怖い。
機嫌が悪いのかもしれない。
でもなんとなく、アスカが落ち込んでいるような気がして、シンジは声をかけた。
「あの、アスカ?」
「……何よ」
努めて優しく穏やかに。
アスカの神経を逆なでしないように極力注意して声をかけたはずなのに、アスカは
まるで親の仇かのようにシンジを睨みつける。
それはもう、殺さんばかりの勢いで。
「……えっと、その」
心配だったと言えば怒られそうで、かといって他の話題もなく。
シンジはあたふたと視線を漂わせる。
(そういえばアレは ――― )
- 834 名前:こっそりと・・・ 投稿日:05/02/14 05:25:19 ID:???
- アスカの前の机に置かれた物体。
それは朝からアスカが大事そうに抱えていた、手のひらサイズの四角い箱。
綺麗にラッピングされていたはずなのに、今はもう見る影もなく皺くちゃになっていた。
「その箱は?」
ぴくり。
アスカの眉が、物凄い角度に跳ね上がる。
(あ、やばい)
シンジは密かに死を覚悟して、
「……目、閉じて」
アスカの予想外に穏やかな声に驚きながらも、条件反射で瞼を閉じる。
暗転した世界の中に響く音。
びりびり。
がさごそ。
何事かと思いながらも決して目は開けない。……後が怖いから。
「……口。開けなさい」
「なんで」
「いいから。とにかく、口開けなさいよ」
仕方なく口を開けるシンジ。
そして。
- 835 名前:こっそりと・・・ 投稿日:05/02/14 05:28:36 ID:???
- 何かを咥えさせられた。
板みたいなそれは、甘く、口の中で溶けて広がってゆく。
「全部食べるまで、見たらダメだからね!」
全部食べたら見れないじゃないか、なんて思いながらもシンジは律儀に目を
閉じたまま、無言でそれを食べ続けた。
ぽりぽり。ぽりぽり。ぽりぽり。
そして食べ終わったところで、そっと目を開く。
アスカは満面の笑みを浮かべていた。
「チョコだ」
「うん」
何でアスカはこんな事したんだろうとか、さっきまで機嫌が悪かったはずなのにとか、
疑問はたくさんあったが何を聞こうか迷っているうちに
「じゃあ、アタシもう寝るから」
と、アスカは部屋に行ってしまった。
その足取りはとても軽く、今にもスキップをしそうなくらい。
シンジには何が何だかよくわからなかったけれど、アスカの機嫌が直った
ことだけはわかったのでほっと一息つく。
それとあともう一つだけわかった事があった。それは ――― 。
「もう一回歯磨きしなきゃ……」
ちなみにシンジがそのチョコの意図するところに気づいたのは、翌日の朝、
2月15日の日付をカレンダーで見たときだったりする。
- 836 名前:こっそりと・・・ 投稿日:05/02/14 05:29:23 ID:???
- 余談。
アスカが朝からチョコを持っていたのはシンジに渡すためだとか、
今までそのタイミングがあったにも拘らず、その全てを悉く逃してきたこととか、
緊張しすぎてかいた汗でラッピングがぐちゃぐちゃになったこととか、
それを見て、うわあもう渡せないよとへこんでいた事とか、
ハート型のチョコを見せないために目を瞑らせたとか、
幸せいっぱいの笑顔で眠りに就いたことなど、当然ながらシンジは知る由もない。