【LAS人】こんなアスカは大好きだ!6【専用】
985氏
695 名前:1 投稿日:05/03/16 19:50:05 ID:???
「なによ!! あたしが邪魔なら、そうハッキリ言えばいいじゃない?!」
「誰もそんな事言ってないだろ!?」

リビングを散らかさないで欲しい―――とのシンジの要望に端をなす、ちょっとしたじゃれ合い。
軽く流して終わってもよかったハズのそれが、すくすく育って、立派な喧嘩に成長してしまった。
ミサトが帰宅しない限り、止める者もいはしない。
シンジがつい口にした、「大体、元はといえばアスカがここに押しかけて来たんじゃないか!」の台詞が決定打だっただろうか。

「もう、いいわ」ひとしきりやり合ったあと、ぽつりと漏らして、アスカは自室へ。
立て篭るのかと思いきや、ドアは開け放したまま。
タンスや机から荷物を引っぱり出しては、バッグに詰め込み始めた。

「・・・なにしてるんだよ、アスカ」
「見りゃ分かるでしょ。出てくのよ」手を止めずに続ける。「とりあえず、貴重品と必需品だけ持っていくわ」

シンジは絶句した。こんな大事になるとは、と戸惑う。
ヒカリの家か、NERVの宿舎か。
ともかく、アスカは葛城邸を去ってしまおうとしている。
会えなくなりはしない。一時的な家出だろうとも思う。けど―――。
このまま、これをきっかけにして、本当に同居が終わることも充分に考えられた。
止めたい、というのがシンジの正直だ。
しかし一方で、いやそもそも悪いのはアスカじゃないか、との意識もあった。
そうしてシンジが逡巡している間に、アスカは手際よく仕度を終えてしまった。

バックを手に、アスカは無言で玄関に向かう。
シンジも口を閉ざしている。何を伝えたいのか、まとまらない。
それでも、衝動と共にアスカの背に腕を伸ばそうと・・・したところで、突然アスカが立ち止まり、シンジを振り返った。

696 名前:2 投稿日:05/03/16 19:51:24 ID:???
「重いから、バッグはあんたが持ってくれない?」
「・・・あ、うん。・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

「よし。んじゃあ行くわよ、シンジ」
「えーと、その。ちょっと待って。待ってよアスカ」展開についていけない。「・・・どこに行くんだっけ?」
「家出よ。さっきも言ったじゃない」
やはり、何がなんだか分からなかった。
「なんで、僕も?」

シンジの簡潔な問いに、アスカは当然でしょ、という表情を作ってみせた。
「あんた、バカぁ? それもさっき言ったわよ」
腰に手を当て、ビシっと決めポーズ。大威張りで宣言する。
―――やや頬を染めながら。


「一番大事で一番必要な『あたしのもの』なんだから、持って行くに決まってるでしょ!!」

697 名前:3 投稿日:05/03/16 19:53:41 ID:???
【おまけ】

「今になって『押しかけ』だなんてさ。酷いと思わない? バカシンジのくせに」
ゲーム画面を向いたまま、背後に語るアスカ。指先はせわしなく動いて、拳法家の少女を操っている。
「ヒカリ、ねぇ聞いてる?」
「うん、ちゃんと聞いてるわ」ヒカリは、疲れを隠さない微笑みを見せた。

「それで、つまり、碇君と喧嘩して家出してきちゃったのよね?」
「うん」
「なのに―――その、なんで、碇君も一緒なんだっけ?」
「やっぱり、迷惑だった?」
「・・・まぁそれはいいんだけど。うん。ウチは二人でも構わないのよ、ていうか賑やかな方がお姉ちゃんも喜ぶし」ここで息継ぎ。「でも、喧嘩中なんでしょ?」

「だって、あたしのだから!」
なぜか格闘技を操る熊をKOすると、アスカは、くるん、と元気よく首を回した。
「それはそれ、これはこれ。喧嘩してるから仲良くはしてやらないけど、でも離れるのもヤなの」

「いかりく〜ん・・・?」
ヒカリは、怒ったような困ったような照れたような、複雑な表情で、部屋の隅っこを見やる。
そこでは、シンジが全身を真っ赤にして縮こまっていた。
「お世話になります・・・」

(了)
注:元ネタは、高橋書店『思わず手帳にメモしたくなる名言・格言発表』(無料配布)から