【LAS人】こんなアスカは大好きだ!7【専用】
◆K2./.00Iu6氏
592 名前: ◆K2./.00Iu6 投稿日:2005/06/06(月) 12:16:12 ID:???
2017 6/6(火)
黄昏時、長い影と追いつ追われつの帰り道。アスカが不意に公園の方向に踵を返した。

「ちょっと付いて来なさいバカシンジ」

ぶっきらぼうにそう言ってさっさと歩み行く背に疑問を投げる事も無く、僕は粛々と後を追う。
こんな風な態度の時は、どうせ訊いても教えてくれないし。
展望台のベンチ前で、アスカは歩みを止めた。僕に振り向かず、やや俯き加減にポツリと言葉を洩らす。

「シンジ、アンタ今日、誕生日よね?」

言われて初めて気付くのが、僕らしいと言えば僕らしい。
だが、僕の誕生日を把握してるなんてわざわざ言うまでもなくアスカらしくない。
(去年も誕生日プレゼントを貰うには貰ったが、それはミサトさんが僕にくれてるのを見て、
 「じゃ、アタシはコレ」と言って、その時食べていたスナック菓子をくれただけだった)

「そうだけど、良く覚えてたね」
「……アタシね。今月厳しくって、お小遣い使いたく無いのよ。だからプレゼント買えない」
「いや、別に良いけど? そんなの気にしなくたって…「だからね!」

僕の言葉を遮るように語気を強めて、アスカがこちらを振り向いた。……何故だか、顔が赤い。

「アンタ、アタシに指輪を買いなさい」
「……へ?」

593 名前: ◆K2./.00Iu6 投稿日:2005/06/06(月) 12:17:18 ID:???
意味が判らない。僕の誕生日にアスカがプレゼントをくれないのは別に良い。
(……ホントは良く無いけど、まあ、あんまり期待してなかったし)
しかし、僕がアスカにプレゼントをする理由が判らない。
いや、しても構わないけど、でも今の会話の文脈に合わない気がする。すごく、する。
だからその疑問を、端的に口にした。

「えっと、なんで?」
「……指輪を買ったら、アタシの両手の指十本の中の、どれでも好きな一本に、その指輪を嵌める権利を与えます。
 それが、誕生日プレゼントよ。どう?」

言いながら、アスカは左手を突き出した。握った拳から。薬指がにょっきり突き出ていた。
にょっきり突き出た指の先まで、夕日に溶け込むような色だった。
だから僕は、自分でも驚くほど自然にその小さな細い肩と震える頭を両手で包み込んで、

「僕もお金そんなに持ってないから、あんまり高価いの買えないんだけど、いい?」

と言った。
返事はボディブローと、

「値段なんてどーでもいいのよ、バカ」

との、実にありがたいお言葉だった。