【LAS人】こんなアスカは大好きだ!8【専用】
44氏
44 名前:1 投稿日:2005/07/25(月) 16:05:03 ID:???
「ねえ、なんでドイツに帰らないの」とアスカに訊いたことがある。
「次の授業何だっけ」とか「タオルを取り替えといて」なんて言うのと同じ調子で。
返答代わりに、アスカはひどく冷たい目をして、僕のおでこに思い切りデコピンした。3回も。
頭蓋にズン、と響くくらいに痛かったから、次に何か質問する時は、ヘルメットを用意しておこうと心に決めた。

それから3年半が経つ。僕らは、おおむね上手くやってきたと思う。
アスカは大抵はしゃんとしていたけど、時々、甘ったれの子猫みたいになった。それからもっと時々には、僕を甘やかしてくれた。
彼女の誕生日や、クリスマスの前や、映画の封切り直前、新しい水着の欲しくなる頃に。

でもそれを計算高いと見なすには、アスカのやり方は、あまりにあからさま過ぎた。あからさまだって事を、二人ともがちゃんと理解していた。
結局のところ、おねだりの半分は、たまに甘えるための口実だった。
僕は苦笑で照れをごまかしながら、アスカに色々な物をあげた。あるいは、物以外のモノを。
そして、自分の魅力で僕がドギマギしてるのを確かめると、アスカは休日の昼寝後みたいに満足げになる。

とにかく、僕たちには迷惑を被ってくれる相手と、迷惑をかけてくれる相手の両方が必要だった。
だから、双方が一人二役でそれをこなしてきた。お互いがお互いの命綱。
そうやって、どうにか世の中の端っこにプカプカ浮かんでいた。

45 名前:2 投稿日:2005/07/25(月) 16:06:11 ID:???
ケンカも沢山した。特にひどいのが4回か5回あって、散々にやりあった。
そういう後は、部屋の惨状を眺めて、二度と争うまいと誓うことになる。誓いは、次にケンカするまでの間だけ守られた。
けど僕らは、離れてしまおうとはしない。
そうは考えなかった。

アスカなんて、僕をその信じがたいくらい白くて綺麗な脚で何度も蹴り飛ばしておいて、直後に、買い物にとことこ付いてきたりすることがあった。
そして言葉以外の方法で、じわりと不安を伝えてくる。「そのまま、どっかに消えるつもりじゃないわよね?」
そんな時は「そんなこと絶対しないよ」と言う代わりに、僕はアスカの手を握った。
ケンカは継続中ってことになってるから、ふてくされたまま。なのに手を繋いで歩く、少年と少女の図。
傍目には奇妙に映っただろう。僕らは間抜けで不恰好だ。みんなそうだ。

そうやって3年半、碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーは生きてきた。

46 名前:3(了) 投稿日:2005/07/25(月) 16:07:37 ID:???
あと数分で18歳になる深夜、今僕はリビングのテレビの前に座っている。
足の間にはアスカがいて、こちらに背中をあずけている。
随分と伸びた僕の手足は、アスカをくるむのにちょうどいい。
アスカの後頭部からは蠱惑的な香りがして、肉体の反応を抑えるのに苦労した。

彼女は今日一日ずっとこの調子で、つまりおねだりを表明していたけど、何を求めているのかは見当もつかなかった。明日の誕生日はアスカのではないし。
そして僕の脳細胞の大半は、僕からの我侭のことを考えるのに忙しかった。
あと1分で18になる。
僕はアスカの香りを吸った。アスカの鎖骨を覗き見た。それからもう一度時計を見た。テレビがうるさいので消す。目をぎゅっと閉じて、開いた。焦っている?うん。時計。
日付が変わった。

「ねぇ、アスカ」と僕は呼びかけた。
続けて、急ぎすぎの我侭を言葉にして伝えた。死んでしまいそうだ。
アスカは、僕の我侭が、口にはしなかった彼女の我侭と同じモノだってことを教えてくれた。

「本当に?」「本当よ」「本当の本当に?」「本当の本当よ。シンジこそ」「本当だよ、もちろん」

僕たちは頬を火照らせて、ふざけてつねりあって、心を甘くするキスをしてまた赤くなった。アスカ。
ずっと、手を繋いで生きていこう。
結婚しよう。
おやすみなさい。